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「劫火の中になお生命ありて」 
円乗山明泉寺14世住職:水谷光子

紫陽花


紫陽花

梅雨つゆのきて庭の紫陽花あじさい瑞々しその当たり前によみがえるもの
戦災の劫火こうかの中を生き伸びぬびし余生は早や半世紀
道ひとつ隔てて災禍を免れし農家の庭に紫陽花の花
罹災四日後くすぶりり続くる街を抜け紫陽花にひて目を覚まされき
生くる希望かきたてられき 瑞々みずみずと咲く紫陽花の生命いのちに触れて
生かさるる身のありがたしこの年もかの日のままに紫陽花の咲く

いくさ知らぬ世代へ遺すメッセージ生あるうちにと重き筆とる
気力残る裡にと辛き筆をとる書きゆく程に血潮の騒ぐ
半世紀ちてもえぬ傷のあと触るれば痛み鋭く走る